ビスマルク海海戦の敗因
ここまでの解説でわかるように、ビスマルク海海戦において日本軍は連合軍に対して大敗しています。
この大敗の原因はどんなことで、負けたことによって日本軍はどんな不利益を被ることになったのでしょうか。
戦いの結果
ビスマルク海海戦は「全滅も辞さず」の戦いであったことを記しましたが、何より戦力の差が開き過ぎていたこと。
これが、日本軍が負けたことの最大の要因に違いありません。
では、戦力の差だけがこの戦いの勝敗を決めたのでしょうか。
この戦いにおいて、連合軍が日本軍の戦艦を多く沈めることができた要因の一つは「反跳爆撃」にあると言われます。
前章で少し触れましたが、ここで改めて反跳爆撃について説明しますね。
反跳爆撃法とは、攻撃機の機体を目標に向けて低高度(海面上3〜5メートル)で飛行させ、目標の手前150〜200メートルで爆弾を投下する戦法です。
投下された爆弾は、側面が海面に当たって跳ね返り(反跳)ながら直進し、弾頭が目標の艦船の側面にぶつかって船を貫通し、船内で爆弾が爆発する仕組みです。
石を投げる水切り遊びと同じようなイメージ、というとよりわかりやすいかと思います。
低高度で飛びながら爆弾を投下することは、攻撃機にとって危険を伴う行為ではありましたが、命中率は急降下爆撃や水平爆撃に比べて格段に上がることが最大の特徴です。
アメリカ爆撃機軍の中型爆撃機とオーストラリア空軍の攻撃機は、当初からこの攻撃方法を用いて攻撃することを計画していました。
一方で日本軍は反跳爆撃に対して全く対策を取っていませんでした。
この海戦における日本軍の生存者は
「反跳爆撃機が雷撃(魚雷攻撃のこと)してきた」
「まるで敵機が海から湧き上がってきたようだった」
とのちに語ったそうです。
爆撃機からの攻撃は上からくるものだけであると思い込み、上空だけを警戒し、日本軍の戦闘機も上空の攻撃機に気を取られていたため、超低空で起きていた事態に対応しきれなかった。
これが多くの戦艦を沈めることとなった要因の一つなのです。
敵に対して無力な火器
また、反跳爆撃以外にも日本軍を苦しめたものがこの戦いにはありました。
もちろん、この戦いだけに言えることではないのですが、日本軍が持っていた火器の能力の低さが日本軍を苦しめ、敗因の一つとなったと言えます。
戦艦に搭載されていた火器は、2章において紹介していますが、第八十一号作戦以前にはこれらの火器で十分事足りるであろうとされていました。
しかし、ビスマルク海海戦において言えば、艦船に搭載された火器は全く役に立たなかったといいます。
これらの火器は本来、近接戦闘用の火器でした。
敵が近づいてきて初めて威力を発揮するのです。
また魚雷を搭載している戦艦もありましたが、魚雷がその効力を発揮するためには、敵方も船などできてもらわないことには攻撃しようがありません。
そしてビスマルク海海戦においては、先述のとおり、戦いの決め手になったのは反跳攻撃です。
日本軍の火器は超低空を飛ぶ攻撃機に対して無力だったのです。
ちなみに、この戦いののち艦船には装備が追加されていくことになります。
ビスマルク海海戦において重傷を負い日本に移送された木村正福少将の進言によって、敵機の低空攻撃に応戦可能であると考えられる25ミリ単装機銃が必要である。と軍部が認めたからです。
輸送網の断絶
ビスマルク海海戦における日本軍の敗北は、どのような影響を与えることになったのでしょうか。
もちろん、その後の戦いにおける軍備、特に先に挙げた艦船における火器の増設などに繋がっていった面もあります。
しかしそれ以上に大きく変わったのは「輸送」です。
この戦いに敗れたことにより、このエリアの制空権、制海権は連合軍側に奪われてしまいます。
それまで兵士や物資を輸送するためには輸送船を用い、船団を組んでいわば堂々と海を渡って輸送を行なっていたのが、制空権、制海権がなくなったとあっては不可能となってしまったわけです。
物資や兵士を自由に輸送することが難しくなったとはいえ、それでも戦いを継続するためには海を越えて輸送することは必須です。
そこで今までとられていた大規模な輸送船ではなく、駆逐艦によって夜間輸送を行う「鼠輸送」。
小型船艇による「蟻輸送」など様々な輸送手段が考えられました。
しかし、これらの方法は輸送のためだけに設けられた輸送船を使った輸送とは異なり、輸送量に大きな制限が加わってしまいます。
結果、戦いに必要な輸送が次第に滞ることとなってしまい、日本軍はどんどんと追い詰められることにつながってしまったと言えるでしょう。
そして日本軍は次第に「全く応援が来ないまま戦って玉砕へ」といった自滅の道へと歩んでいくことになりました。
【第二次世界大戦】ビスマルク海海戦をわかりやすく解説!・まとめ
ビスマルク海海戦は、太平洋戦争中における戦いの一つに過ぎません。
ただ、この2日間の戦いだけを見ても日本が連合国に負けることが明らかであったことがよくわかります。
戦争の悲惨さ、伝わるのではないでしょうか。
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【参考文献】
「太平洋戦争海戦全史」真人物往来社戦史室編、新人物往来社
「WWⅡ悲劇の艦艇過失と怠慢と予期せぬ状況がもたらした惨劇」大内健二、光人社NF文庫
ビスマルク海海戦/BattleoftheBismarckSea:ダンピール海峡の悲劇http://xn--ww2-523es33s4hr4hk.jp/kantaisen14c.htm
【太平洋戦争】ダンピール海峡の悲劇【ビスマルク海海戦】https://oplern.hatenablog.com/entry/2019/02/03/144121
https://www.weblio.jp/content/%E3%83%93%E3%82%B9%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%82%AF%E6%B5%B7
http://www.kotoba.ne.jp/word/10
https://www.nhk.jp/p/special/ts/2NY2QQLPM3/blog/bl/pneAjJR3gn/bp/pj4N907ONd/
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