イギリスについて間違った認識をしている方も多いのですが実は、私たち日本人がイギリスと呼んでいる国の正式名称はグレートブリテンおよび北部アイルランド連合王国なんです。
ブリテン島の中にある、イングランド・ウェールズ・スコットランド・北アイルランドという4つの国(カントリー)から成り立っている国なのです。
国際法上では主権国家(リーダー)をイングランドとしていますが、4つの国は長い歴史の中でお互いの支配権や領土をめぐって争い続けできました。
時に多くの犠牲者や奴隷を出したこともあって、その関係性は非常に複雑なんです!
さて、今回はその中でも最も早くイングランド王国に併合されたウェールズについて、その歴史を簡単に解説してみたいと思います!

アーサー王伝説のはじまりはウェールズ⁉アングロ・サクソンと戦ったブリトン人の国

ウェールズという名は、現在のドイツあたりからブリテン島までやってきたアングロ・サクソン人が、古英語で先住民のブリトン人をよそ者と呼んだことに由来しています。
ウェールズ人の自称はウェールズ語でカムリ(我々)といいます。
ブリトン人で最も有名な人物は、恐らくアーサー王伝説のアーサー王です。
アーサー王伝説には様々なストーリーがありますが、主軸となっているのはブリトン人の王アーサーが侵略者であるアングロ・サクソン人に抵抗するというもの。
そして、アーサー王に関する最古の記述は、中世ウェールズの叙事詩『ア・ゴドディン』とされています。
アーサー王伝説の通り、古代~中世のウェールズにあった小国の王たちは、勢いを増すアングロ・サクソン人の侵略から、自分達の領土や国民を守り続けなければなりませんでした。
さらに国内での争いや流行り病などで、ブリトン人たちは非常に荒廃した時代を過ごすことになりました。
本来のプリンス・オブ・ウェールズは滅ぼされていた
現在のイギリス王室では皇太子がウェールズ大公(プリンス・オブ・ウェールズ)という称号を得ていますが、これはもともとウェールズの小国をひとつにまとめるリーダー的存在の呼称でした。
これが現在の形になったのは、13世紀後半のことです。
11世紀後半、アングロ・サクソン人の国イングランドは、同じゲルマン系であるノルマン人によって支配されました。
ノルマン人はイングランドを支配した後、ウェールズ・スコットランド・アイルランドへ勢力を拡大します。
そして、13世紀終盤に最後のウェールズ大公がイングランドに敗北。
ウェールズ大公の称号がイングランド王子のものになり、ウェールズはここで自治権を失ってしまいます。
ウェールズの人々はその後何度か反乱を起こすものの、ことごとくイングランドに鎮圧されました。
ウェールズの血を引くイングランド王が誕生!

国としての権利をうしなってしまったウェールズ。しかし15世紀後半、ウェールズ大公の血を引くイングランド王が誕生します。
テューダー朝初代国王のヘンリー7世です。
ウェールズ大公の血を引いているテューダー朝の王には、ウェールズも比較的友好的でした。
そして、その息子ヘンリー8世の時代に、イングランドの政治家トマス・クロムウェル主導で、ウェールズは完全にイングランドと統合されました。
しかし、イングランドの家臣にはウェールズ人も取り立てられ、ウェールズはイングランド独自のキリスト教宗派であるイングランド国教会の設立にも協力的だったようです。
ちなみに、17世紀初めにエリザベス1世が亡くなって終わりを迎えたテューダー朝ですが、次の王朝であるスチュアート朝の王ジェームズ1世はヘンリー7世のひ孫でした。
そのため、現在のイギリス王室はウェールズ大公の子孫でもあります。
500年経ってから、独自の権限を再取得したウェールズ
統合後、ウェールズは政治的に力を落としましたが、ウェールズ人としてのアイデンディディは維持し続けていました。
また、18世紀ごろから工業が発達し、産業革命の時は南部の炭鉱が世界最大の石炭輸出地域となりました。
このように、経済的には重要な役割を得ていましたが、自治権はあくまでイングランドにありました。
しかし、1979年3月、戦後の不況で恩恵を受けられなくなったウェールズは、スコットランドと共に独自の議会の設立を要求します。
この時には賛成票を得られず棄却されましたが、1997年9月には賛成票を多数獲得し、1999年にようやくウェールズ国民議会が設立。
ただ、この時はまだ立法権が制限されていました。
2006年7月、ウェールズ国民議会はついに、自治をするのに必要な立法権を獲得します。
実に500年の時を経て、ウェールズは自治権を取り戻したのです。
ウエールズの人にとっては感動的な瞬間だったでしょうね!
ウェールズの歴史を簡単にわかりやすく解説してみた!まとめ
現在、EU離脱によって再び不安定な状況になりつつあるイギリス。
ウェールズも当然影響を受けるので、今後も注目が集まる地域といえます。
歴史を学んでウェールズを良く知ったうえで見ていると、より理解が深まるかもしれませんね。
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