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アドルフ・アイヒマンとはどんな人?真面目にすぎる性格が仇になった男

ヒトラーの側近アドルフアイヒマン
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歴史上、最大の大量虐殺(ジェノサイド)といえば、ナチスによるユダヤ人大量虐殺が真っ先に思い浮かぶと思います。

ナチスによって虐殺されたユダヤ人は少なくとも500万人に上ると言われています。

今回はユダヤ人の大量虐殺を先導したアドルフ・アイヒマンを取り上げたいと思います。

彼はユダヤ人大量虐殺の象徴であるアウシュビッツ強制収容所の最高責任者として指揮を取りました。

第二次世界大戦後、逮捕されたアイヒマンは決して自身の罪を認めませんでした。

しかし彼を調べれば調べるほど、誰もがアイヒマンのようになってしまう危険性を知ることができます。

今回は、アイヒマンから現代社会に生きる私たちへの教訓を引き出したいと思います。

目次

アイヒマンの生い立ち

アドルフアイヒマンどんな1ミリグラム実験

1906年3月19日、アイヒマンはドイツ西部のラインラントで生まれました。

アイヒマンは学校の成績が悪く、国立実科学校を卒業することができませんでした。

日本でいうところの中学校にあたります。

その後、機械工学を学ぶため、工業専門学校に通いますが、ここも卒業することができず退学しています。

見た目とは違ってけっこうな落ちこぼれだったようです。

社会人時代のアイヒマン

専門学校を退学した後、父親の経営する鉱山工場で働きます。

しかし父親の事業も行き詰まりを見せると、次に石油会社の販売員として働きました。

しかし結局会社の人員整理に伴って1933年に解雇されています。

ナチ党に入党

アイヒマンは、会社を解雇される前年1932年にナチ党に入党しました。ヒトラーの演説を聞いて、アイヒマンは興奮しながらこう語ったそうです。

「ヒトラーの演説を聞いてから、自分はドイツ民族の敵であるユダヤ人と仲良くしていたことに腹が立った」

アイヒマンは親衛隊に所属後、情報局に異動になり、その後ユダヤ人担当課に配置されることになります。

そして1935年には結婚をしています。

ヒトラーとの共通点

少年時代のアイヒマンとヒトラーには共通点が多くあります。

ヒトラーもアイヒマンと同じく国立実科学校を卒業することができませんでした。

その後、画家を目指して美術学校を受験していますが何度も不合格。ヒトラーはホームレスに転落します。

1914年に第一次世界大戦が勃発し、ヒトラーはドイツ軍兵士として従軍します。

第一次世界大戦後、敗北したドイツは大混乱し、多くの政治グループが乱立しました。

その中には危険な思想を主張するグループもありました。ヒトラーはそうした政治グループを監視する役割を軍から任されます。

ある日、政治グループが集会を行うという情報を入手したヒトラーはその集会に参加することにしました。

その集会を主催していたのあのナチ党だったのです。歴史とは偶然の積み重ねかもしれません。

このように見ると、ヒトラーとアイヒマンは第一次世界大戦前までは、ある意味で社会の「負け組」のような存在でした。

人は物語を必要とする

ドイツにとって第一次世界大戦の敗北は、今までのドイツの在り方を否定するものでした。

第一次世界大戦後に結ばれたヴェルサイユ条約において、ドイツはとことん虐められました。

多額の賠償金、植民地の没収、軍隊の廃止、という屈辱的な内容を課せられ、ドイツが長い時間をかけて積み上げてきた物語が否定されたのです。

ドイツ人のプライドは地に落ちました。

今まで正しいと思っていた価値観、つまりドイツ人が共有していた物語が崩壊し、ドイツ人はボロボロになったプライドを癒してくれる新しい物語を求めていました。

その中で新しい語り部(ストーリーテラー)として人々を熱狂させたのが、あのヒトラーだったのです。

中学校も卒業できなかった青年が「勝ち組」にのし上がった瞬間です。

ヒトラーが選択した戦略は「敵」を設定することです。それはドイツにヴェルサイユ条約を押し付けたイギリスやフランスではなく、ユダヤ人です。

ユダヤ人を排除さえすれば、ドイツは再び復興する。ヒトラーはこう叫びました。

思いもよらなかった敵が登場したことでドイツ人は興奮し、ヒトラーを救世主として祭り上げたのです。

バブル崩壊後の日本に現れたのは…

1980年代後半から90年代前半の日本は、バブルが崩壊して本格的に日本経済が転落し始めた時期になります。

今までの右肩上がりの経済成長はストップし、働けば働くほどお金が入って来る時代は終わりました。

この頃の日本人の物語は極端に行ってしまえば「お金」でした。その「お金」が突如失われ、多くの日本人が物語を失ってしまいました。

そしてこの時期に日本に現れたのが、オウム真理教になります。

先行きの見えない不安定な社会の中で、社会の空気を敏感に感じ取った多くの若者たちが、麻原彰晃が語るエセ物語に騙され、地下鉄にサリンをばら撒いたのです。

物語を失い混乱した社会では、ナチ党やオウム真理教のようなグループがいつ出てきてもおかしくありません。

第二次世界大戦とアイヒマン裁判

1939年9月1日、ドイツはポーランドに侵攻し、第二次世界大戦が勃発しました。

アイヒマンの転落はここから始まります。

アウシュビッツ時代

1942年1月、ベルリンで行われた会議、通称ヴァンゼー会議において「ユダヤ人問題の最終解決」、つまりユダヤ人を強制収容所に移送して絶滅させることが決まりました。

1942年3月からアウシュビッツ強制収容所への移送が始まり、この移送プロジェクトの全権を担ったのがアイヒマンになります。

この2年間で500万人ものユダヤ人を移送したと、アイヒマンは自慢していたそうです。

なかなかのサイコやろうですよね。

1945年に入り、ドイツの敗戦が濃厚になります。

親衛隊長官のハインリヒ・ヒムラーはユダヤ人の虐殺を停止するようアイヒマンに命令しましたが彼はやめませんでした。

1945年4月30日、ヒトラーは妻(前日に結婚式)であるエヴァ・ブラウンと共に自殺しました。

5月7日、ヒトラーの後継者に指名されたデーニッツが無条件降伏に署名しました。

こうして第二次世界大戦におけるヨーロッパ戦線はほぼ終結しました。第二次世界大戦が正式に終了するのは、日本が無条件降伏に合意した8月14日になります。

アルゼンチンに逃亡

アイヒマンは、アメリカ軍に拘束され捕虜収容所に収容されますが、そこからの脱出に成功します。

1947年頃は、西ドイツで転々として潜伏を続け、1950年には難民を装ってイタリアに到着。

リカルド・クレメントという偽名で難民としてアルゼンチンに入国しました。

その後、ブエノスアイレス近郊に家を建て、ドイツから家族も呼び寄せました。  

アイヒマン・ついに逮捕

アドルフアイヒマン性格

1957年、アイヒマンを追っていた西ドイツの検察は、アイヒマンがアルゼンチンに潜伏している情報をつかみ、調査員を派遣しました。

アイヒマンが自身の結婚記念日に、妻に花束を買ったことが、調査員がアイヒマンであると断定する証拠となりました。

1960年5月11日、アイヒマンは拘束され、5月21日にイスラエルに連行されました。

アイヒマンの裁判 

1961年4月11日、エルサレムでアイヒマン裁判が始まります。

この裁判映像は世界中に放送されました。彼は全ての罪状に対して「無罪」を主張しました。

ヒトラーという上司の命令に従っただけだ、というのがアイヒマンの論理です。

そして同年12月15日、死刑判決が下されます。

翌年1962年5月31日から6月1日にかけて、絞首刑が執行されました。焼却された遺灰は地中海に撒かれました。

なぜユダヤ人は「敵」に設定されたのか

ユダヤ人は、国家を持たない民族としてヨーロッパの各国に住んでいました。

ユダヤ人に対しては「守銭奴」という言葉があるように、どの社会においても「お金を扱う仕事は汚い」という根強い偏見があります。

各国に散らばり仕事がないユダヤ人は仕方なく誰もやりたがらない、お金を貸す仕事などに従事し、その国の人々から嫌味嫌われていたことは事実です。

シェイクスピアの『ヴェニスの商人』に登場する金貸しのシャイロックもユダヤ人という設定です。

こうした苦しい生活を乗り越えて大きな財産を築くことに成功するユダヤ人も現れます。

第一次世界大戦の際、イギリスは「バルフォア宣言」において、戦後のパレスチナにユダヤ人国家を建設することを発表しましたが、その目的はユダヤ人から経済的な援助を得ることにありました。

第一次世界大戦で敗北したドイツは経済もボロボロな状態でした。

そうした中、ヒトラーは「ユダヤ人=金持ち」という偏見を利用し、ユダヤ人はドイツ民族の敵であるという物語を作りました。

アイヒマンもこの手法に騙された一人です。

同じような手法で権力者になったのが、アメリカのトランプ前大統領です。

彼はアメリカ人が貧しくなった理由は、アメリカに入って来る「移民」がいるからだとし、移民がアメリカに入らないようにメキシコとの国境に壁を作ると主張し、大統領に当選しました。

人類は進歩しているのか、よく分かりません。

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アーレントとミルグラム実験

アイヒマン裁判については、ユダヤ人の政治学者であるハンナ・アーレントの『エルサレムのアイヒマン──悪の陳腐さについての報告』が有名です。

第4章では、アーレントの主張とそれを裏付けるミルグラム実験を取り上げ、我々が学ぶべきことを考えたいと思います。

アイヒマンは○○な人

アーレントは、アイヒマンの第一印象を「普通の人」と言っています。

この「普通」という言葉の意味は、誰もがアイヒマンになる可能性がある、ということをアーレントは主張しています。

例えば、私たちは何かしらの組織に所属しています。大きなところだと、日本国に所属しており、小さなところだと学校や会社などになります。

少し想像してほしいのですがもし突然上司に「部下を殺せ」と言われたら、あなたはどうしますか。

もちろん拒否すると思いますが「もし殺さなければお前の大事な人を殺す」と言われたら、どうでしょうか。

おそらく悩むと思います。

あくまでも極端なケースですが、ここでアーレントが主張したいことは「組織」というのは大なり小なり「暴力性」を含んでいるということです。

「暴力性」という言葉を「権力」に置き換えても大丈夫です。

なぜ組織の指示に従うのか?

なぜ私たちは毎日(重たい足を運び)仕事に行くのでしょうか?それは人それぞれだと思いますが、大きな理由の一つとしてお金を稼ぐことがあると思います。

そして組織(会社)は社員を従わせる力があります。

社員(部下)を解雇する、給料を下げる「権力」を組織は持っているからです。

この力を持っているからこそ、私たちは上司の指示がどんなに間違っていても黙って従わなければいけません。

このように考えると程度の違いはもちろんありますが、誰もがアイヒマンと同じような環境、立場に置かれていることになります。

「もし指示に従わなければお前を首にする」と上司に言われたとき、私たちはその指示を簡単に断ることができるのでしょうか。

ミルグラム実験

この証言を裏付けるものとして「ミルグラム(アイヒマン)実験」とよばれる有名な実験があります。

「アイヒマン実験」には、ヒトラー役である「博士」、アイヒマン役である「先生」、ユダヤ人役である「生徒」の3人が登場します。

先生(アイヒマン)は生徒(ユダヤ人)に問題を出し、生徒が間違えた場合、先生は生徒に電流を流します。電流を流すか、流さないかの判断は、博士(ヒトラー)がすることになります。

この実験では博士(ヒトラー)と生徒(ユダヤ人)は仕掛け人で、つまりヤラセ(ドッキリ)になります。何も知らないのは先生(アイヒマン)だけになります。

実際に生徒(ユダヤ人)には電流は流れず、わざと問題を間違えて苦しむふりをするだけです。

この実験の結果ですが、なんと半分以上の先生役(アイヒマン)の人物が、命に関わる最大電圧のボタンを押したという結果が出ました。

この実験から得られる結論(教訓)は、人は権力がある人物(上司)から命令されると、それがいくら間違っていようとも、それに抵抗することはできないということです

人は組織に所属している以上、誰もがアイヒマンになる可能性があることが示唆されました。

私の経験に基づく組織論

私自身の経験で恐縮ですが、私は教員として10年ほど高校に勤務していました。公立高校になるため公務員になります。

私が勤務した公立高校においては、学校の管理職(校長や副校長、教頭)にあたる人たちは、大体3年間勤務した後、別の高校に転勤するのが通例になっています。

自分が所属している学校で大きな問題を起こさなければ、それが評価されて進学校など有名な高校に転勤(出世)できるわけです。

そのため管理職の心理はこのようになります。

「自分が所属している3年間はなるべく問題が起きないでくれ…」

退学者などを出してしまうと校長としての評価が下がってしまうため、校長は問題行動(犯罪行為も含む)を起こす生徒を退学させることを嫌がります。

教員時代に、恐喝を繰り返して何人もの生徒から金品を強要する生徒がいました。

明らかに犯罪行為だと思うのですが、教頭からは「本人が学校を続けたいと言っている限り、退学はさせられない」と言われました。

もし保護者から訴えられたら、裁判で負けてしまうからだそうです。

こうなってくると、管理職が仕事をする目的は、自分の出世のため、組織の利益を優先することになります。自分が所属している間はいかに問題が起きないようにするか、問題を小さくするか、酷い場合は隠蔽することに腐心することになります。

学校を良くしたいとか、生徒の成長を手助けする、といった本来の教育目的など念頭にありません。

こうした自分のことしか考えず、組織の利益を何よりも優先する管理職を見て、組織とは教育本来の目的すら忘れさせてしまうものだと暗澹たる気持ちになりました。

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アドルフ・アイヒマンとはどんな人?真面目にすぎる性格が仇になった男・まとめ

家庭内におけるアイヒマンは妻に優しく、休みの日には娘とオペラやクラシック音楽を見に行く、家族思いの普通の父親でした。

しかしナチスの仕事において、アイヒマンはいかに「効率」よく、ユダヤ人を殺すのかを常に考え続け、そして裁判では「自分はヒトラーの支持に従っただけだ」と反省も謝罪も示しませんでした。

彼は、自分の妻や娘がもしガス室で殺されたら、という想像力を持ちませんでした。

彼は個人として自分で考えることを放棄し、ひたすらヒトラーの指示、そして組織(ナチス)の利益を優先しました。

今回、組織というものは徐々に人々の想像力を奪い、組織が存在する本来の目的をも失わせる暴力的な側面があることを確認しました。

私たちは必ずどこかの「組織」に所属しており、そこから逃れることはできません。

アイヒマンを通じて、私たちは組織の暴力性を自覚しながら生活することの重要性を学ぶ必要があると思います。

【参考文献・参考サイト】
ハンナ・アーレント(1994年)『エルサレムのアイヒマン──悪の陳腐さについての報告』大久保和郎訳 みすず書房
世界史の窓 http://www.y-history.net/index.html

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