アジア歴史

金大中事件ってどんな事件なの?韓国で最も恐れられたKCIAとは?

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みなさん、こんにちは!

日韓の間には、多くの歴史がありますよね。

1970年代、同国の政敵に追われ、日本に亡命していた韓国の大統領候補がいたのを知っていますか?

韓国の政治家で、のちに大統領となる金大中(キム・デジュン)という方です。

金大中氏は、日本で拉致され、殺されかけ、逮捕され死刑宣告を受け、釈放されたのち軟禁されて・・・と、映画のような壮絶な人生を歩みました。

今回は、金大中氏が日本で拉致された事件、「金大中事件」について解説していきたいと思います!

金大中事件とは?

金大中事件とは、韓国の政治家でのちに大統領となる金大中氏が、韓国中央情報(KCIA)により連れ去られてしまった事件のことです。

金大中氏は、1973年8月8日東京都千代田区のホテルグランドパレス2212号室から拉致されて、船で連れ去られます。

その後ソウルで軟禁状態となり、5日後にソウル市内の自宅前で発見されました!衝撃的な事件ですよね!

なぜこんな事件が起こってしまったのでしょうか?

金大中氏はなぜ狙われたのか?

当時の韓国は「軍事独裁政権」が長く続いており、朴正熙(パク・チョンヒ)大統領が再選を目指していました。

その大統領の座を競い合った、最大のライバルが金大中氏です。

金大中氏は、朴大統領と大統領の座を争い接戦を繰り広げましたが、朴政権側の汚い選挙戦の前に僅差で敗れてしまいます。

勝利した朴政権側でしたが、頭角を現し出した金大中氏を「自身の地位を脅かす存在」として抹殺しようと試みたのです!

激しく動揺していた朴政権側

普通の感覚だと、それにしても抹殺はやりすぎじゃない?と思いますよね。

しかし、当時の朴政権側は別の問題を抱えていたため、そうせざるを得ませんでした。

その問題とは、北(北朝鮮)を屈服させる「南北統一」です。

「南北統一」を実現させるには、あまりに時間が足りなかったのです。

国外の相手を屈服させるミッションを抱えている中で、国内の相手に苦戦している場合ではありません。

そのため、「抹殺」という強硬手段に出たわけです。

実行犯「KCIA」(韓国中央情報部)の存在

金大中氏の抹殺は、KCIA(韓国中央情報部)という大統領直属の諜報機関によって企てられます。

大統領選直後、金大中氏の乗る車に大型トラックが衝突し3人が死亡した交通事故が発生しました。

なんとこの事故は、KCIAが行った交通事故を装った暗殺工作だったことが後に判明します。

この事故で死亡者がでたものの金大中は命拾いをしました。金大中はこの事故で腰に障害を負ってしまいます。

恐れられた集団KCIA

KCIAはもともと、対北朝鮮諜報機関で反体制派に対する監視弾圧も主な任務でした。

朴政権に反対するものを摘発し、時に拷問を行い、殺害することもあったため、国民からも恐れられる存在でした。

任務の遂行のためには手段を厭わない、恐ろしい集団です。

日本での拉致工作

金大中氏は、そんなKCIAの手を逃れるべく日本に亡命していました。

そして日本とアメリカを往復しつつ、国外の有権者に対して民主主義を求める運動を活発に行なったのです。

命を狙われながらも、政治活動を活発に行う金大中氏の姿勢には感服しますね!

この明らかな反政府運動をとる金大中氏に対して、憤りを感じるKCIAでしたが、なかなか足取りを掴めずにいました。

しかし、金大中氏が日本にいる情報を掴んだKCIAは、ある作戦で金大中氏の拉致に成功します。

KCIAの巧妙なワナ

KCIAのある作戦とは、「野党関係者による帰国の説得」です。

KCIAは、国内の野党政治家で金大中氏とも関わりの深かった梁一東(ヤン・イルトン)党首が、病気療養のため日本に発つことを知ります。

そこで、金大中氏に対して「帰国して政治活動をするべき」と帰国を説得するように、梁一東氏を誘導したのです。

そして事件は起こりました。

1973年8月8日午前11時頃、東京都千代田区のホテルグランドパレス2212号室にて梁一東氏との会談を終えた金大中氏は、工作員によってクロロホルムを嗅がされ拉致されました。

白昼堂々の犯行です。

KCIAのワナに屈してしまった金大中氏。その後を車で関西に運ばれ、神戸港から船に乗せられたとみられています。

金大中氏は事件後、「船中で工作員に暴行を受けた」「手足を縛られ海に投げ込まれそうになった」と証言。

私たちの想像を絶する恐怖や苦痛と戦っていたのだと思います。

KCIAの手を逃れる金大中氏

そんな絶望的な状況から、金大中氏はどのように助かったのか。

救世主は空から現れました。

事件を察知した海上保安庁がヘリコプターで拉致船を追跡し、照明弾を投下するなどして威嚇したのです。(アメリカ側から日本へ要請があったともみられている)

拉致グループは日本政府に拉致の事実が発覚していると推測し、金大中氏の殺害を断念します。

その後拉致グループは計画を変更し、金大中氏を釜山まで連行した後、ソウル市内の自宅付近で解放しました。

金大中氏は後日談として、「甲板に出され海に投げ込まれそうな時、日本のヘリコプターが照明弾を投下した」と証言しています。

しかし、そういった記録はどこにも残されていないそうです。

真相については、関係各者は固く口を閉ざしています。

金大中氏も極限状態だったため、このあたりの真相ははっきりとはわかりませんね。

主権を侵害された日本

日本国内で外国の要人が拉致されたので、日本政府も黙ってはいません。

事件後、事件現場には犯人と思われる人物の指紋やその他たくさんの証拠が残されていました。

日本はその証拠をもとに、駐日本国大韓民国大使館一等書記官・金東雲(キム・ピョンチャン)に出頭を命じます。

金東雲は、KCIAの東京の指揮官とされていた人物で、主犯であることは間違いありませんでした。

しかし、金東雲は外交権を行使し、出頭を拒否。

それによって日本は、「ペルソナ・ノン・グラータ」という外交官を国外退去させる命令を行うこととなりました。

韓国の言いなりとなった日本

多くの状況証拠を持ちながらも、日本は拉致実行犯である金東雲を出国させたのです。

本来であれば、日本は犯人を検挙して処罰するべきです。

しかし日本は、「政治決着」で穏便に事を済ませたということになります。

なぜ日本はそんな選択をとったのでしょうか。

田中角栄の闇ガネ

後年になって、当時の田中角栄首相が韓国から「多額の金銭」を受け取り、それで解決を図ったとされる疑惑が浮上します。

あくまで疑惑ですが、韓国ソウルではすっかり定着しているそうです。

闇将軍で「金権政治の象徴」とされた角栄氏なら、なんとなく想像できてしまいますね。

角栄氏に関してもう一つ興味深い情報があります。

娘の田中真紀子元外務大臣が、当時の角栄氏のこんな発言を聞いたそうです。

「殺すな!爆破するぞ!」

これが本当なのであれば、角栄氏は金大中氏の殺害の中止を求めたということになりますね。

金大中誘拐事件のその後

まさに急死に一生を得た金大中氏。

こんな壮絶な事件の後ですから、ぜひ大統領としての順風満帆なキャリアをスタートさせてほしいですね。

しかし、金大中氏にはそれ以降も数々の不幸が待っていました。

まだ終わらない金大中氏の不幸

なんと、解放された金大中氏は、逮捕され死刑宣告を受けてしまうのです。

それまで行っていた、国外での反政府運動が原因でした。

当時の韓国の裁判所は政権の犬だったため、今では考えられない理不尽な判決となったのです。

しかし世界中からの猛烈な批判によって、韓国政府は死刑を執行することができなくなってしまいました。

無事釈放された金大中氏でしたが、その後も民主化運動によって逮捕と釈放を繰り返します。

さらには軟禁されていた時期もありました。

事件後も壮絶な人生を歩んだことがよくわかりますね。

金大中・悲願の大統領へ

1997年、金大中氏はようやく大統領になりました。

大統領としての金大中氏の功績の一つとして、「日韓関係の改善」があります。

「日韓共同宣言」を発表し、韓国内で制限されていた日本文化を解禁しました。

また、北朝鮮との関係でも、「南北首脳会談」を成功させます。

それが評価され、ノーベル平和賞を受賞するなど、優れた業績を数多く残しました。

その一方で、北朝鮮に対する資金援助によって、困窮していた北朝鮮を救済活動も行っています。

意図していたわけではありませんが、結果的に北朝鮮のミサイル開発を促進してしまった、という歴史的失敗も起こしています。

金大中事件ってどんな事件なの?韓国で最も恐れられたKCIAとは?まとめ

いかがでしたでしょうか?

今回は「金大中事件」について解説しました。

金大中氏は、韓国の民主主義のために命をかけたと言っても過言ではありませんよね。

またそれと同時に、当時の韓国の「軍事独裁政権」の悲惨さも印象に残ります。

たった50年ほど前の出来事とは到底思えません。

金大中氏は拉致事件後、こんな言葉を残しています。

「暗闇の中でも尚 明日の日の出を信じ、地獄の中でも尚 神の存在を疑わない」

どんな苦境でも望みを捨てなかった金大中氏。

どんな暗闇の中でもいつか日の出がくるということを、金大中氏が人生をもって教えてくれました。

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【参考文献・参考サイト】
『拉致-知られざる金大中事件』著:中薗英助 新潮文庫
『金大中事件最後のスクープ』著:古野喜政 東方出版
『金大中事件の政治決着』著:古野喜政 東方出版
『田中角栄に消えた闇ガネ』著:森省歩 講談社
『日韓「政治決着」で葬られた謎の拉致事件』PRESIDENT Online https://president.jp/articles/-/23601?page=1 

 

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