皆さんこんにちは!
イスラム国ってご存知ですか?
厳密には国家ではないのですが、中東で勢力を増している組織で、よくニュースでテロや過激な暴力活動で取り上げられていますよね。
実際に彼らはどんな組織で何をしているのか?分かりやすく解説していきたいと思います。
イスラム国の成り立ち
ISILはイスラム国家樹立運動を行う、元々はアルカーイダ系のイスラム過激派組織です。
その過激な暴力活動により一時は、イラク、シリア両国の国境付近の大部分を武力制圧して「国家」樹立を宣言していました。
しかし、現時点では外交関係の相手として国家の承認を行った国家はありません。
彼らはどのように成り立ちどういう組織なのか見ていきましょう。
イスラム国の歴史
ISIL通称イスラム国は2000年頃にアブー・ムスアブ・アッ=ザルカーウィーがヨルダンなどで築いたJama’at al-Tawhid wal-Jihad(略称:JTJ)を前身としています。
彼らはアフガン戦争やイラク戦争の後、イラク国内でさまざまなテロ活動を行いました。
しかし、その後も彼らはイラク人民兵とも衝突を続け、他のスンナ派武装組織と合流し、2006年10月「イラクのイスラム国(略称:ISI)」と改称しました。
シリア内戦によりISIはシリアに転戦し、同大統領バッシャール・アル=アサドと敵対することになります。
ISIはその後、反アラウィー派のジハーディストたちが合流し、1万数千人もの巨大組織に成長しました。
その後も、シリアで活動するヌスラ戦線という組織とも合流し「イラクとレバントのイスラム国(略称:ISIL)」別称「イラクとシリアのイスラム国(略称: ISIS)」に改称するとの声明を出したのです。
2013年12月30日、座り込み運動の解散をきっかけとしてイラクへの侵攻を開始。
2014年6月29日、ISILはアブー・バクル・アル=バグダーディーをあらゆる場所のイスラム教徒の指導者でありカリフであるとしイスラム国家として建国を宣言。
組織名からはイラクとレバントを削除し、「イスラム国(IS)」と改変することを発表しました。
中東の地理や政治に詳しくない方からすると非常に複雑な経緯で成り立っていたんです。
イスラム国の理念・思想
イスラム国を理解するためには彼らの理念の根底となるサラフィー主義とカリフ制を理解する必要があります。
まず、サラフィー主義とは、「ムハンマドの没後3世代(あるいは300年間)に見られた世の状態が理想的であった」とする復古主義的な思想です。
反シーア派、すなわち「シーア派が悪い」という考えを持っておりサウジアラビアなどを攻撃する時も、シーア派に対する攻撃を優先すべきだと考え、同国のシーア派民衆をも攻撃してました。
サラフィー主義はその特徴としては、「アッラーのみを信じなければならない」と厳格に考え、イスラムの他派が作った墓や樹木をも崇拝対象となる偶像として破壊する行為があります。
また、宗教的な厳格な戒律を守らなかった者に厳罰を与えるなど他国からすると人権を侵害していると非難されています。
カリフ制というのは、預言者ムハンマドが亡くなった後、632年に始まった「カリフ」を預言者の代理人とするイスラムにおける政治制度のことです。
ただその後いくつもの王朝でカリフが生まれ変遷していったため、カリフの権威の正統性については色んな立場があるようです。
多くのイスラム国家やイスラム民族にとっても、「カリフ制」が理想国家だとされています。
イスラム国家の組織体系
イスラム国は国家を自称し,首相、戦争相、情報相等の閣僚ポストを設置しています。
2014年6月29日には,ISILから「イスラム国」への名称変更及び最高指導者(当時)アブ・バクル・アル・バグダディのカリフ就任等を宣言し、国家を模した組織を形成しているのです。
さらにこの「カリフ」の下,それを補佐する「シューラ評議会」及び「弁務官委員会」が設置されています。
「シューラ評議会」のメンバーは,知識及び技能を備えた人物が選ばれています。「弁務官委員会」のメンバーは「カリフ」によって任命され意思決定を補佐しています。
イスラム国の構成員は1万数千人と言われています。
そのうち約6,300人は「イスラム国」の建国が宣言された後に参加しており、近年、急速に勢力を拡大していると言われています。
その戦闘員は約2~3万人に上ると言われています。
また、シリア人など現地人の他にも、外国人の傭兵も積極的に募集しており、約16,000人が外国人と言われています。
外国人戦闘員は、アラブ世界やヨーロッパ・中国・そして日本などからも参加しています。
また、イスラム国から派生した小規模な組織が、中東と北アフリカの全域で増加しておりリビアにはすでに3,000人の戦闘員がいるとされています。
その過激な思想と軍事力や資金を潤沢に持っているため「単なるテロ組織を超えている」と評されることもあります。
イスラム国の活動
非常に特徴的な組織であるイスラム国ですが、実際にどのような活動をしているのでしょうか?
詳しく見ていきましょう。
シリアでの活動
イスラム国はシリア内線を気に同国での支配地域を広げていきました。
シリア軍の基地を制圧するほかにも、油田地帯を掌握して販売するなどして資金減としてその勢力を広げていきます。
しかし、その残虐な行為が避難され、支援してくれていたアルカイダなどの組織からも距離を置かれるようになります。
2015年に入り米軍の空爆やその支援を受けたクルド人に押され、大半を制圧していたシリア北部から撤退しました。
しかし、その後も首都ダマスカス付近を含む同国での活動を活発化させていきます。
アサド政権軍や他の反体制派勢力,クルド人勢力等と対立をして、各地で戦闘を継続しました。しかし、ロシアがシリアでの空爆を開始したほか,フランスでのテロ事件の受けてテロ対策を強化した米国等がイスラム国に対する空爆を強化しました。
だんだんと支配地を失っていくイスラム国は、2017年12月,シリアにおける全ての支配都市及び町を喪失しました。
アルカイダ、タリバンとの関係
アルカイダは、元々、米同時多発テロの首謀者とされるオサマ・ビンラディンが結成したテロ組織です。
旧ソ連のアフガニスタン侵攻を発端としてイスラム人兵士を支援する活動をしていました。
アルカイダも過激なテロ活動を行い、米国等から敵視されているため近い関係であると思ってしまいます。
確かに、イスラム国は元々はアルカイダを源流としていますが、実は絶縁状態にあります。
上述したように、残虐行為を繰り返す「イスラム国」にアルカイダ指導部が反発したのです。
そして、決定的だったのは、イスラム国の指導者であるバグダディ氏がカリフを名乗ることで関係悪化が決定的となりました。
どこの馬の骨とも分からない野蛮な奴らが勝手に、自分たちイスラム教徒の最高権力者あると宣言したようなものですから反発されるのも当然ですよね。
世界各国との戦い
2014年に米国がイスラム国の支配地域に対して空爆を開始しました。
シリアのアサド政権は反米路線でしたが、アサド大踏力自身もこのイスラム国の勢力拡大に危機感を持ち世界各国との協調路線を取ると声明を出しました。
その後もロシア、ドイツ、フランス、イラン、トルコなど世界各国がイスラム国に対する軍事作戦を展開していきます。
そして、2019年10月26日、とうとうアメリカ軍が指導者バグダーディーの居所を急襲し、彼を殺害します。
この作戦はカイラ・ミューラー作戦と呼ばれ、長年の対テロ戦争はこれによって大きな節目を迎える事となりました。
今も、イスラム国を国家として承認した国はなく、全世界のほぼ全ての国の政府と敵対している状態です。
イスラム国が起こした事件
数あるテロ組織の中でも特に過激な活動をしていることでも有名なイスラム国。
具体的にどんなことをしてきたのでしょうか?
私たちの住む日本では考えられないほどびっくりする事件を起こしています。詳しく見ていきましょう。
文化浄化事件
イスラム国は古代の貴重な遺跡や遺産を破壊してインターネットで喧伝するなどの活動もしています。
もともとイスラム教は偶像崇拝を禁止しており、タリバン政権なども同じように文化財の破壊活動をして国際的な非難を浴びたりしています。
イスラム国も、異端視するイスラム教シーア派の聖廟や古いキリスト教会など対立する宗派宗教の文化財を破壊する行動をしています。
古代アッシリア帝国の都市ニムルドや、世界遺産であるパルティア王国交易都市ハトラ遺跡を破壊し、その様子をインターネットに流しました。
破壊活動だけではなくそれをネットで全世界に喧伝するという点が特徴です。それを見た人々のショックは計り知れません。
残虐行為と誘拐事件
イスラム国はその残虐な行為でも知られています。
ISILが刑務所としていた病院からは、原型をとどめないほど顔を殴打され手足を縛られた男性の遺体約100体が発見されました。
ある軍事基地ではイスラムにより約600人が虐殺されたともいわれています。
また、捕虜たちを拷問にかけたり、殺害したりする映像を撮影しそれもインターネットで公開してしまうのです。
さらに世界の様々な人たちを拉致し、それをネタに各国を脅迫するということもしています。
オレンジ色の服を着せられた捕虜とその横で銃などの武器を持ち黒いマスクをしている人が立っている映像をニュースなどで見た人も多いのではないでしょうか?
その映像をインターネットで流すことでより効果的に脅迫をして、身柄を開放する代わりに多額の身代金を要求するという事を繰り返しています。
日本との関わり
日本人もイスラム国のの犠牲者となっています。
2014年湯川遥菜さんと後藤健二さんという日本人男性がイスラム国に拘束されているというニュースがインターネットの動画と共に取り上げられました。
湯川さんは民間の軍事会社顧問として、後藤さんはフリージャーナリストとしてシリア入りしていたところを、拉致され拷問にかけられているという事でした。
他の捕虜と同じようにオレンジ色の服を着たやつれた男性が捕虜となっている姿はとても衝撃的でした。
日本政府に対して彼らの身代金を要求しましたが、毛局彼らは殺害されてしまいました。その際の日本政府の対応については様々な議論がされました。
イスラム国ってどんな国?まとめ
皆さんいかがでしたでしょうか?イスラム国の活動や理念は私たちの考えることからかけ離れすぎていて、理解できない点も多いかと思います。
世界各国は彼らと対峙して戦っています。彼らも彼らなりの正義や理念があるのかもしれませんが、関係のない人々が犠牲になるようなことは早くなくなってほしいですね。
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【参考文献】
https://ja.wikipedia.org/wiki/ISIL
https://toyokeizai.net/articles/-/451313
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB282Y20Y1A820C2000000/
https://kotobank.jp/word/IS-658333
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