古代、高度な文明を維持したエジプト文明、メソポタミア文明、黄河文明、インダス文明の4つを四大文明と呼びます。
その中でもとりわけ多くの謎に包まれ、研究も進んでいないインダス文明。そのインダス文明最大の謎が、モヘンジョダロと呼ばれる遺跡です。
今回は、そんな謎多きモヘンジョダロについてご紹介します。
モヘンジョダロとは?
紀元前2600~1800年頃、現在のインド・パキスタン・アフガニスタン一帯で栄えたと言われているインダス文明。
モヘンジョダロは、そんなインダス文明のなかでも未だに多くの謎が残る「謎多き遺跡」なのです。
遺跡は1922年に、インド人歴史学者によって発見されました。
「モヘンジョダロ」とは現地の言葉で「死の丘」という意味で、それまで古代の死者たちの墳丘とされており、地元民も恐れて近付かなかったといいます。
また未だインダス文字が解明されていないため、都市の本来の名前も分かっていないのです。
地下にはまだまだ発見されていない遺跡が眠っているとも言われており、まさに謎に包まれた遺跡といえますね!
モヘンジョダロの都市型遺跡
モヘンジョダロは都市をそのまますっぽり納めたような遺跡で、約4km四方の広大な敷地の中に、約3万人が暮らしていたとされています。
その中には市場や学校、沐浴場、住居など生活に必要な施設が整っており、生活・政治・宗教儀式など全てがこの中で行われていた様子がうかがえます。
その一方で他の文明では一般的な王宮や神殿が存在しないのも特徴で、この点もさらに謎を深くさせ、多くの学者を悩ませる要因となっています。
果たして本当に存在しないのか、まだ見つかっていないだけなのか、はたまた予想外の形として残っているのか・・・本当に謎だらけの遺跡ですね。
次の章では、遺跡内部の特徴について触れていきます。
モヘンジョダロ・計画された都市
遺跡内部はまさに、計画都市。
非常に整然と区画され、そしてシステム化された様子がうかがえます。
街は碁盤の目のようになっており、南北3つと東西2つを貫く大路で12区画に分けられています。その区画はさらに小路によって内部へ繋がっているのです。
大路は幅10メートル、小路も幅1.5~3メートルと十分な広さで作られていて、荷物を乗せた荷車などが運搬できるようなスロープなども施されています。こうしたことから、商業面も活発だったのではないかと予想できますね。
そして内部は大まかに城塞地区と市街地区に分けることができます。
城塞地区
城塞地区には主に神官たちが居住していたと言われており、沐浴場、穀物倉、ペンやインク壺などが出土した学校、武器が出土された軍人地区などが存在しています。
しかしこれらは暫定的に名付けられているだけで、実態はほとんどのことが未だ謎に包まれているのです。
例えば、沐浴場。小学校のプールの半分くらいの大きさで、水を使った儀式が行われていたと考えられますが、具体的なことは分かっていません。
その横にある穀物倉にも不可解な点があります。穀物を保管していたと言われていますが、沐浴場の横という湿度の高い場所に穀物を保管するでしょうか?
また一粒の穀物も発見されていないことから、別の建物だったのではないかと言われています。
その他の学校や軍人地区も関連するものが出土されたというだけで、本当はどんな場所だったのかはっきりしていないのが本当のところです。
真実が分からずモヤモヤしてしまいますが、その分想像をふくらませ色んな可能性があると思うと、なんだかワクワクする気持ちにもなりますね!
市街地区
市街地区では主に庶民が生活していたと言われており、住居や台所、井戸、ゴミ捨て場など生活に関連した遺跡が多く残っています。
住居跡には屋根こそ残っていないものの、排水システムや2階から捨てられるゴミ捨て場など、機能的な生活だった様子がうかがえます。
2階からゴミが捨てるなんて、結構大胆な生活スタイルだったんでしょうか?
市街地区はそのなかでさらに庶民や農民が暮らしていた地区、職人が暮らしていた地区、上流階級の人々が暮らしていた地区と分けられます。
市民のなかにも身分の違いがあったようです。
水の都
モヘンジョダロ最大の特徴のひとつが、治水システムの凄さです。
モヘンジョダロは、インダス川と今は枯渇してしまったガッタル・ハークラー川という二つの水の恵みを最大限に利用した都市でした。
街の内部には排水溝が張り巡らされており、住宅から流された排水は大通りの排水溝へと合流してまとめられます。
また家庭用風呂や、ヨーロッパでは19世紀まで登場しなかった水洗トイレが完備されており、衛生意識の高さにも驚かされます。
先ほど触れた沐浴場や市民の生活は、この上下水道システムによって支えられていたのですね。
謎に包まれた滅亡
モヘンジョダロが謎の遺跡とされている要素は、他にもあります。
その要素というのは、滅亡の原因。
なんとモヘンジョダロはある日突然、滅亡してしまったのです。
その原因については様々な憶測が飛び交い、隕石や核戦争、地球温暖化などオカルト・都市伝説のようなものもあります。
しかし最近の研究では、大規模な洪水が原因だったのではないかと言われているようです。
もし水で発展した都市が水によって滅亡してしまっていたとしたら、なんとも皮肉な話ですよね。
塩による被害
1980年、モヘンジョダロはユネスコ世界遺産へ登録されました。しかしその保存に関して大きな問題が発生しているのです。
それが塩による劣化。
遺跡周辺の耕地のための灌漑(かんがい)施設やダム建設によって地下水位が上昇。この地域の気候と乾燥によって地中の塩分が地表に現れ、遺跡を構成するレンガを土台から劣化させているのです。
モヘンジョダロはこれでも15%ほどしか発掘されていないと言われており、すでに失われてしまった遺跡や遺物もあるのだとか。
いまだ解明されていない謎が多いこともあり、これ以上遺跡そのものが失われないよう早急な保存が叫ばれています。
謎が解明される前に遺跡が消えてしまっては、取り返しのつかないことになってしまいますね。
モヘンジョダロとは?インダス文明の深すぎる謎!まとめ
四大文明のなかではエジプト文明やメソポタミア文明が人気で、インダス文明は文字が分かっていないこともあり、あまり研究が進んでいません。
しかしいま分かっている範囲でもその規模や文明の高さは他と比べて抜きん出ており、まだまだ多くの驚くべき事実が眠っているように思います。
遺跡が安定して保存され、新たな発見がされるよう願いたいですね。
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【参考資料】
「NHKスペシャル 四大文明 インダス」近藤英夫、NHKスペシャル「四大文明」プロジェクト(著)モヘンジョダロについては研究が進んでおらず、専門に扱った本はほとんどありません。インダス文明全体について扱った本か、観光系の本でしか紹介されていないのが現状です。
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