三国志演義の中でもトップクラスの人気を誇る「赤壁の戦い」
勝利したのは天才軍師の采配が大当たりした「孫権・劉備連合軍」
しかし、曹操だってボーっとしていたわけではありません!では、なぜ勢いのあった曹操が敗北してしまったのか!今回は赤壁の戦いで大群率いる曹操が敗退した原因を考えていきます。
曹操、赤壁の戦いまでの戦力は?
208年、赤壁の戦い時点の曹操軍の数は80万~100万であったと言われていて、ここまで兵を大きくできたのは、8年前官渡の戦いで大勝負に勝利したことが大きく影響しています。
官渡の戦い
200年、北を統一していたのは袁紹でした。曹操は中原を支配しており、双方とも4州ずつ領域を確保、全土はこの2強が支配し、当然その勢力はぶつかり合います。
どちらも甚大な領土を持っているのでこの勝負の行く末は歴史がひっくり返る大勝負。
双方とも領土の数は互角ですが、兵力は比べ物にならないほど圧倒的に袁紹の方が大きいものでした。この時期曹操は戦闘が重なり兵力が落ちていましたが、袁紹は比較的落ち着いていたのです。
曹操2万VS袁紹10万
兵力では圧倒的に不利だった曹操軍は、この戦いの前哨戦である白馬・延津の戦いで勝利し勢いがつきます。しかし、やはり袁紹強し。途中経過は袁紹が優勢、長期戦へ突入です。
撤退が頭によぎる曹操軍でしたが、袁紹軍に裏切者が発生し形勢は逆転。兵糧庫を攻撃された袁紹軍は撤退を余儀なくされました。
この戦いを制し、曹操軍は北の支配者となり天下統一に王手をかけます。
曹操、赤壁の戦いでも有利なはずだった
北を制した曹操は荊州に手を伸ばします。
劉表の後継者劉琮は幼くとてもじゃないけど早々に対抗する力はありません。あっさりと降伏し曹操は荊州を手に入れます。
そして、ついに東の呉の孫権を制しようとするのです。
曹操80万VS孫権・劉備5万
軍事力は圧倒的有利です。しかし、曹操は戦わずして呉を制することを選びます。同盟、ですね。これにあたり曹操は孫権にお手紙を出しますがその内容はほぼ脅迫文。
手紙を送ると同時に長江に20万の水軍を待機させいつでも攻撃できますよ、と圧力をかけます。
曹操、赤壁の戦いでの失敗ポイントを考察
この戦いにおいて、曹操が絶対有利だったのに結果は大敗退したのにはいくつものやっちゃったポイントがありました。一つずつ見ていきましょう。
その1:水軍の弱さ
曹操軍は数こそ多いがその編成は偏っていて、北を本拠地としていたので陸上戦を得意としていたため騎馬隊が強く、水軍はイマイチでした。戦場となる呉は河が多く、どこから攻めたとしても水上戦は避けられません。呉は水軍が最強です。
さて、どうしたものか。
どうしようかと思っていたところに、荊州の攻略に成功します。荊州は、 蔡瑁 率いる8万ほどの水軍を持っており、これが丸っと曹操の下に就いたわけです。
思いがけず水軍は手に入りましたが、荊州の水軍は実践はほとんど無かったため、戦術や整備など呉軍の水軍との力の差は歴然。これが大きな敗因の一つとして考えられます。
その2:欲しがりやさん
曹操の軍が大きくなった理由の一つとして、積極的な人材の確保が挙げられます。ようは、「良い人いたら引き抜いちゃえ!」ということで、そうそうの欲しがりグセは良い面もあれば時に不運ももたらします。
先制攻撃で蔡瑁率いる水軍がやられた時、呉軍の軍師周瑜を采配ぶりを見て味方に欲しいと考えるんですね。
家臣の中に周瑜の旧友 蒋幹 がいたので、これを利用し周瑜獲得に乗り出します。偶然を装い周瑜を誘い出す予定でしたが周瑜にはそんなことバレており、曹操水軍の要、「蔡瑁が裏切者だ」というニセの情報を掴まされてしまいます。呉にとっては曹操の水軍なんて、蔡瑁がいなければ統率をとれる人なんていませんから、勝率がグッと上がりますからね。
この情報を信じた曹操は、蔡瑁の首を跳ねてしまいます。
曹操が周瑜を欲しがったばかりに起こった不運により、曹操の勝率はグンと下がってしまうのです。
その3:騙されやすい?
曹操は冷酷で戦略家と言われていますが、結構騙されやすい性格なんだと思います。赤壁の戦いにおいてもなんどか「それ信じる?」という場面がありました。
連環の計
蒋幹が 龐統 を連れて曹操の元にやってきます。龐統と言えば、水鏡塾で孔明と並ぶ奇才と言われた人物。有名人大好きな曹操は喜んでお出迎えし、龐統に陣営を視てアドバイスをもらうことにしたのです。
船内で疫病や船酔いが多発して悩んでいた曹操は、「船同士を繋いだ方が良い」との助言に「さすが先生!」とすぐさま船をつなぐ指示を出します。曹操の水軍は瞬く間に長江に浮かぶ一つの要塞のようになりました。
実はこれも劉備軍の作戦で、龐統にそのように指示するよう仕組んだ罠でした。火計が成立するには東南の風が吹くかどうかが重要でしたが、船同士をつないで固体化することにより、火がついたときに一網打尽にできるということも大きなポイントだったのです。
この大事な時に、突然来たお客さんの言うことをどうして採用してしまうのでしょうか。
苦肉の計
呉の老将 黄蓋 が、周瑜にはむかった事を理由に下半身むち打ちなどの公開リンチの刑に処されます。黄蓋の部下闞沢が曹操の元を訪れ、黄蓋が降伏をしたいと言っていると言いに来るのです。
一瞬は疑いましたが、公開リンチを見ていた者がいたこともあり信用。降伏の方法は、開戦の時に自分が先鋒として船に乗り込み、食料や武器を積んでそのまま曹操軍に寝返るというもの。
しかし、これまた周瑜の考えた罠で、黄蓋は先鋒で突っ込んできたかと思ったらそのまま曹操軍に火を放ち、20万の兵を丸焼きにしてしまうのでした。
敵将の、それも結構な重役が降伏するって、信じます?
こういったところから、曹操って実は純粋で騙されやすい人だったのではないかと推測できます。そして、その性格が災いし、歴史的大敗を記することになったのでしょう。
最大の敗因は、軍師の力不足?!
魏の軍師と言えば、この人を忘れてはいけません
司馬懿仲達 !
しかし、残念なことにこの赤壁の戦い時点ではまだ表舞台に出てきていません。
司馬懿が曹操に仕官したのは208年。石碑の戦いが始まった時には新人で、参加していたのかすら不明です。仮病を使ってお休みしていたという話もあります。さすがです。
さて、そんな司馬懿が赤壁の戦いに参陣していたらどうなっていたでしょうか?
司馬懿がいたら?その1
まず、赤壁の戦いにGoをかけなかった可能性が高いですね。荊州を手に入れてノリノリだった曹操ですが、ちょっと落ち着いたほうが良かったかもしれません。
荊州の水軍がまだまだ力不足というのは周知の事実だったわけで、どこからか海上戦のエキスパートを引き抜いてきてトレーニングをすべきだったのです。
曹操を攻めてこようなんて国はそんなにすぐには出てこなかったはずですから、もっとじっくり攻めても良かったはず。
司馬懿ならきっと「時期尚早」と言い、呉との同盟にストップをかけたのではないでしょうか。
司馬懿がいたら?その2
司馬懿だったら間違いなく苦肉の計や連環の計を見破っていたでしょう。曹操はこれまでも軍師の助言はしっかりと耳を傾けていました。呂布や袁術、袁紹との戦いでも曹操が最も信頼していたと言われる軍師 郭嘉 の指示に従い見事勝っています。今回も 荀彧 が何度か助言をしていますが、郭嘉ほどの信頼が無かったため聞き入れてもらえませんでした。
司馬懿は曹操に「他のチームには絶対に渡したくない」「このまま生かしておいては恐ろしい」と思わせた人物。士官登用がもっと早ければそれまでに実績を積み間違いなく名参謀として周瑜・孔明とバチバチの戦術を繰り広げていたはずに違いありません。
赤壁の戦いで曹操なぜ敗北したのか!武将に恵まれなかったから?それとも風向きか?まとめ
曹操が80万もの兵力を持っていたのに5万の連合軍に負けてしまった理由としては、
- 水軍の力の差がありすぎた
- 曹操の人欲が出すぎて余計なことをした
- 人を見抜く力が無かった
- 軍師の言うことを聞かなかった
と言ったところでしょうか。
一番大きいのは④でしょうね。
敗戦後曹操は
郭嘉がいたなら(赤壁の前に病死してしまった)このような大敗はしなかったであろう
と言っていたように、信頼できる軍師不在のもと自分の判断を最終決断とするしかなかったんですね。
司馬懿が活躍するのは曹操の息子 曹丕 の時代になってから。
ここからの三国志もドラマティックな展開が待っていますよ♪
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三国志を題材にした作品はいっぱいありますが、「曹操」と主体として作られた映画をご存じですか?
曹操
タイトルはそのまんま「曹操」です。董卓、呂布との戦いや、劉備との出会いなど曹操側から見た三国志です。曹操は冷酷な人物として描かれることが多いですよね。しかしこの作品は、幼少期のエピソードや家臣との絆など感情溢れる曹操が見どころ!
夏候惇とのエピソードは泣けます。
そしてこちらは、赤壁欠場が悔やまれる軍師、司馬懿を中心にした作品です。
三国志~司馬懿 軍師連盟~
司馬懿の生涯を描いた超大作。製作費60億という力の入れようは映像を見ていただければ分かるでしょう。とにかく美しい!
知略タップリの司馬懿の策をとくとご覧あれ!と言った内容です。三国志を題材にした作品の中でも司馬懿を中心にしたものは珍しいので貴重な作品です。
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